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2006/09/26

百聞は一見に如かず

 私がユーザビリティーテストを長くやってきて実感したことの話である。
ここでも“ユーザビリティーテスト”とは、開発しているもしくは開発が済んだソフトウェアを個室で使ってもらって、それを別室で観察するものである。被験者は、そのソフトを使ったこのない人やそのソフトを使う人たちの代表のような人たちである。
私は、ソフトウェア開発において仕様を策定する立場にあり、策定した仕様が実際に有効なのか?あるいは、既存の仕様のどこが問題なのか?を調べるために3年にわたり数種のソフトウェアのユーザビリティテストを担当した。

 そのときに学んだのがタイトルにもある “百聞は一見に如かず” である。
ユーザビリティテストを始めて間もない頃は、ユーザーに頻繁に質問をしてその答えを詳細に書きとめていた。ところが、ユーザーの答えにはあまり一貫性がなく、仕様の策定にはあまり役に立たないことに気がつくのにそれほど時間はかからなかった。
 私が悩んでいるときに、そのときの上司が 「ユーザーの意見を聞くんじゃなくて、ユーザーのやっていることを見るんだよ。自分の目を使って情報を得るんだ。」 というアドバイスをくれた。それを聞いた私は目から鱗が落ちる思いであった。

 それからは、あいかわらずユーザーに対して質問はするものの、質問は自分の仮説を確認するためのものがほとんどとなった。つまりそれまで、「XXXをどう思いますか?」 といった質問から、「XXXには気がつきませんでしたか?」「XXXを使わずにOOOを使ったのはどうしてですか?」 といった具合である。

 よく覚えているユーザビリティテストがあり、その回はユーザーから過去に要望にあった機能を実装した開発中のソフトを使っていた。
ユーザーは最初気がつかなかったので、
 私 「XXX を使ってみてください。」
 被験者 「XXX いいですね~。この機能が欲しかったんですよ。」
そのあとも引き続きテストしてもらい、テストの課題に XXX を使うと簡単にこなせるものがあったが、その被験者はついに XXX を使うことはなかった。
つまり、「欲しい機能」 といいつつ、実際にソフトを使っているときは XXX を使わないのである。
もちろん、使い慣れていないというためであるだろう。それよりも私がここで言いたかったのは、ユーザーが“すごく欲しい”といったとしても、慣れも含めてそれを本当に積極的に使うとは限らないということである。
前回のテーマとつながる話だが、開発者はユーザーの意見を鵜呑みにしてはいけないのである。

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