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2006/10/19

ユーザビリティ・テスト -活用法-

 ユーザビリティ・テストの有効な活用法について少しだけ書いてみる。

 まず、一番大事な “テストをする側の心構え” について書いておく。
ある意味、この心構えがテストを有意義なものにするか、無意味なものとして金と時間を無駄にしてしまうかの分かれ目となる。
その大切な心構え、それは、

  “被験者の行動をすべてありのままに受け入れる”

ことである。
「なんだ、当たり前のことじゃん」 と思われるだろうが、実はこれがけっこう難しい。私も被験者の行動をそのまま素直に受け入れられるようになるまで、毎週ユーザビリティ・テストを見続けて三ヶ月かかった。
どういうことかというと、“自分が考えに考え抜いて” て、“ユーザーにとって一番使いやすい” 形に仕上げたと自負した製品である。ところがテストをしてみると、被験者はこちらの想定した使い方をしてくれない。使い方がわからなくてまごまごしている。最初の頃はいつも 「ちゃんと使える被験者を連れてこんかい!(ノ`д´)ノ彡┻━┻」 と一人で騒いでいたものである。
ところが三ヶ月ぐらいたったあるとき、ふと 「あれ? もしかして被験者が悪いんじゃなくて、被験者が使い方に困るような仕様にした私が悪いの?」 ということに気がついたのである。私の中でユーザビリティ・テストが有効に働きだしたのはそれ以降であった。自分の仕事を妄信して、目の前の現実を受け入れられない間は、ユーザービリティ・テストをしても何も得られないということを覚えていて欲しい。


 短時間で確認できる問題の確認に向いている。
一般人 (パソコンに慣れていない人に被験者になってもらうことも想定してあえてこう呼ぶ) に参加してもらうことを考えれば、それほど長時間テストすることはできない。1被験者、2時間 というのが平均的な拘束時間と思われる。一般におとなが集中できる時間は15分、断続的に行って45分 と何かで聞いたことがある。と仮定すれば、一つのシナリオが15分で終わらせることができことが、効率のいいテストを行える条件となる。たとえ2時間拘束しても、2時間目いっぱいテストできるとは思わないほうがいい。休憩をのぞいた実時間で考えれば1時間前後であろう。

 被験者の行動を見て、こちらが判断できる問題の確認に向いている。
たいていの機能はそうなっているとは思うが。例えば、つかってみて被験者が心地よく使えたか? をしらべるのはけっこう難しいと思われる。なぜなら、人はほんとうのことは言わない(というか言えない)からである。別にうそをついているわけではない。以前にもにたような話を投稿しているが、ユーザーは無意識のうちに自分をかばうような話をしてしまう。テストをしているこちらは、「できない」 「わからない」 とはっきり言ってほしいのだけれど、被験者側には、“うまくできなかった。恥ずかしい” という思いが出てしまうことが多く、また、こちらに気を使って、あまり否定的な意見が出てこない。あるいは、自分の考えを上手に表現できない場合も多い。
被験者は本音を話してくれないことを前提に、テストを見ている側が 「あ~、今わからずに悩んでいるな」 とか、「あ~、この機能は使いづらそうだ」 とかを、被験者の行動から読み解く必要がある。それゆえに、被験者の行動からその機能への被験者の評価が読み取れないようなテストは、行ってもあまり得るものがない。

 製品がターゲットにしている被験者を集める。
実は被験者を集めるのがたいへんである。被験者には、当然、製品がターゲットとしているユーザー層から来てもらわなければ意味が薄い。
私が携わっていた製品はパッケージ・ソフトウェアであり、ターゲットとするユーザー層は、不特定多数のパソコン初心者~初級者であった。そのユーザー層は、パソコンそのものにはそれほど興味がないため、ユーザビリティ・テスト被験者の募集をパソコン関連書籍やパソコン関連サイトかけても引っかかってこない。
パソコンの利用に長けている、中級車~上級者であれば、人材派遣会社などから単発の仕事としてきてもらうことは容易であるが、こちらの売り込みたいユーザー層とは異なるため、テストをしてもこちらの欲しいデーターが取れない。
社内や特定の業務の人たちにつかってもらうことがわかっているソフトウェアであれば、実際にその人たちに声をかけてテストすることができるので、被験者集めは比較的容易となる。

 最後に一つ面白い実例を。
新しいバージョンで、製品内で使っているアイコンを刷新すべく、外部のデザイン会社にアイコンの作成を依頼した。そのときに、納品の条件として “私のやっているユーザビリティ・テストで、十分にわかりやすいアイコンであると確認できること” というつけさせてもらった。
そのときのテストは、選択方式でやってもらった。左にアイコン、右に機能の説明をそれぞれランダムな順番に置き、機能にはアイコンが存在しないダミー選択肢も入れた。被験者には、なるべく直感でアイコンと機能を関連付けしてもらった。
作ったアイコンは何回かに分けて提出することになっていた。一回目に提出したアイコンのユーザビリティ・テストしている日に、たまたま二回目のアイコンの提出にデザイナー本人が来社していた。そこで、せっかくのチャンスだからと少し時間を割いてもらって今まさに行われているユーザビリティ・テストを見てもらった。
私は既に何回か見ていたので、一回目のアイコンが実はあまりわかりやすくなくて、ほとんどの被験者は正しく機能とアイコンを結び付けられないことを知っていた。一方のデザイナーは自分のデザインに自信満々で、最初のアイコンデザインで納品が完了するものと信じていた。
実際のテストが始まった。やはり被験者は機能の説明から正しいアイコンを選ぶことができない。デザイナーの顔色がみるみる変わっていったのを今でもはっきりと覚えている。結局、くるときには自信満々の顔をしていたデザイナーは、テストを見て、会社を出るときには、かなり落ち込んだ状態で帰っていった。そのぐらいユーザビリティ・テストの結果は非情なのである。
その後、そのデザイナーには相当がんばってもらい、最後にはほとんどの被験者がアイコンから正しく機能を選択できるようになった。また、そのあと数年してから、同じデザイン会社の別なデザイナーの方とお会いすることがあり、そのときの話をする機械があった。その別なデザイナーの話では、当時、私の製品のアイコンを担当したデザイナーは、日夜七転八倒しながらデザインをしていたということであった。
当時のデザイナーさん、お疲れ様でした。m(_ _)m ペコリ

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