« 【私のお気に入り】 のど飴編 | トップページ | 奈良が好き »

2006/11/28

テスティング -職人テスターがいなくなる?-

 この間、3年ぶりに前の会社の元同僚とあって少し話をした。その元同僚はプログラマーである。

 話の中で、元同僚は 「最近は、テストをすべてツールによる自動テストで行うようになった。おかげで、以前のように集中してテストをして、出荷直前に緊急でバグを修正することが難しくなった。」 とぼやいていた。

 以前に書いたように、自動テストは必要であり、今は自動テスト抜きにソフトウェアの高い品質を保障することは難しい。今まで人海戦術でやっていたテストを一定の品質で、安く行うという点で、自動テストは極めて有効である。経営者やマネージャーが率先してテストの自動化を進めるのも、経営の効率化を考えれば当然である。

 しかし、マニュアルテストを効率よく行える技術を持った “職人テスター” とでも呼べるべきテスターまでなくしてしまうのは、私はどうかと思う。自動テストが充実すれば、たしかに昨日今日テストを始めたようなテスターであっても、自動テストツールを使って、一定レベルのバグを見つけることは可能である。だがもし、既存の自動テストでは再現が安定しない(起こったり、起こらなかったりする)バグがあった場合はどうなるだろう。そのようなバグはけっして少なくはない。同時に使われていたソフトウェアや、場合によっては内部のメモリの使われ方の違いだけで、バグが再現したりしなかったりする。

 そんな時も、自動テストのスクリプトを作るための時間を見積もって・・・、とかやっていたらとても短期間ではバグはつぶせない。それよりも、多くの経験を積んできたベテラン テスターが集中して手動テストを行ったほうが、はるかに効率的にバグが見つかるはずである。自動テスト至上主義は、そういった緊急事態の備えをまったくなくしてしまうということでもある。

 高度に工場の自動化が進んだ機械メーカーや自動車メーカーでさえ、今になって旋盤や深絞りの職人、匠といってもよい、を育成しようとしている。試作品を神業で作っていく技術者が高齢となり、引退の時期が迫っているためである。早急に後継者を育成しないと技術が失われてしまうところまで追い込まれているらしい。工作ロボットが高性能になり、何でもできると勘違いをして、手作業で行う技術を軽視しすぎたつけが回ってきた結果であろう。

 製品の製作がほとんど自動化された工業製品でさえ、試作品を作るための匠が必要不可欠だということを、メーカーは再認識した。試作品ができなければ、その先の量産化も行えないということである。
 一方のソフトウェア産業はどうだろうか。製品であるソフトウェアは、いまだにプログラマーの個人的な能力と手作業で作られている。私は、家内制手工業の段階だと思っている。そんな手作業で作られているソフトウェアを、検査だけ完全に自動化することには、やはり無理があるとしか、私には思えない。やはり製造メーカーのように、少数のその道の匠を残して、技術を継承していくべきだと思っている。そして、技術の継承には、多くの時間と多くの経験が必要である。

 私の前にいたチームでは、テスティングに関する技術が、まさに失われようとしているように思えた。その傾向が会社内の一つのチームにとどまるとも思えない。やがて、会社全体からテスティング技術が失われていくのではなかろうか。

 「自社に技術がなければ、外部の専門会社を使えばいい」 といった話はよく聞く。しかし、自らは製造技術を放棄して、製造を外部に任せたアイワがどうなったのか(PDF)。人件費が高い日本国内で製造を行うのは難しい、といわれながら、液晶の製造を国内で行っているシャープの経営はどうなのか。自社で技術を確立して継承していくことが、企業あるいは組織を存続させていく上で重要な要素であることの例はいくらでもあるのに・・・。そんなことよりも、目先の上司命令、目先の効率化、目先の利益、が大事なんだろうなぁ、とむなしく納得してしまう私であった。

|
|

« 【私のお気に入り】 のど飴編 | トップページ | 奈良が好き »

テスティング」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/61641/12781934

この記事へのトラックバック一覧です: テスティング -職人テスターがいなくなる?-:

« 【私のお気に入り】 のど飴編 | トップページ | 奈良が好き »