人は自分の聞きたいことしか耳に入らない
私は情報集めが好きなので、何か物を買おうとしている人から相談を受けることが時々ある。
「今度、液晶テレビを買おうと思ってるんだけど?」
「デジカメが欲しいんだけど、どれがいいと思う?」
「よさそうなパソコンを教えてよ?」
といって聞いてくるときは、普通によさそうな機器を教えることができる。
要注意なのは、
「×××社の▲▲▲▲っていうモデルを今度買おうと思っているんだけど、どう思う?」
というように、具体的な製品名を出して相談しに来るときである。
最近は、こういう場合に、
「うん、いいんじゃない。いいと思うよ。」
と当たり障りのない答えを返すことにしている。
下手に 「いや~、その手の製品なら ○○○社の◎◎◎◎ がいいと思うよ。×××社の▲▲▲▲ よりも高めだけど性能や使い勝手がぜんぜんいいから。×××社の▲▲▲▲ には、(ピ~~~~) っていう問題があるっていう噂だし。」 などと答えようものなら、
「え~~、▲▲▲▲ かっこいいじゃん。安いし。絶対に ▲▲▲▲ はいいと思うな~。なんで ▲▲▲▲ のこと悪く言うわけ?」
みたいな感じで、ムキになって反論される。
私は正論で相手を説得しようとするのだが、結局説得できずに、相談に来た相手は 「もういい」 といってどっかにいってしまうことが多かった。
私の説得の仕方がうまくないというのは、ま~認めるとして、「相談に来て人のいうことを聞かないなんて、絶対にあいつはおかしい。」 とずっとそう思っていた。しかし、そういうケースが実は多い、というより、そういうケースのほうが多いことにだんだん気がついてくる。そして、
「そうか、具体的な物を持ち出して相談に来るヤツは、相談に来ているんじゃなくて、たんに 『いいと思うよ』 と同意して欲しいだけなんだ。」
と気がついたのはずいぶんと歳をとってからのことだった。それに気がついて以来、そういう相手には、最初のほうで書いたように 「うん、いいんじゃない。」 と答えるようにしている。
そういうタイプの人は、自分でもう 「絶対にこれを買う」 と決めている。ところが、それほどその種の機器に詳しくないため、完全に不安を取り除くことができない。そこで、その辺に詳しい人に “賛同” してもらって、その不安を拭い去ろうとするようである。“ようである” と表現したのは、自分にはそういう気持ち、価値観がないため、あくまで私の想像だからである。
自分が絶対にいいと思っているものについて、“相談” にいったら逆に悪く言われる。そうすると、絶対に買うと決めている本人が悪口を言われたような気になってしまうらしい。結局、相談に来た人は 「それすごくいいよ」 という、“自分が聞きたい言葉” を聞きに来るのが目的なんだな、と私は考えることにした。
人は(もちろんすべての人ではないが)、“自分が聞きたい話”以外は聞きたくないんだな、ということを、私はそこから学んだ。だから、企業や組織で問題が収集できなくなるまで上層部に伝わっていかなかった、という事例がすごく納得できる。上層部の人たちが “聞きたい話だけ受け入れる”、“聞きたくない話を拒絶する” タイプであれば、それを察した中間層、下部の従業員達は、上層部が聞きたくない話を絶対に上に上げようとしないであろうから。
そこまでいくと、“聞きたい話だけ聞く” 態度は、会社の存亡、組織の存亡にかかわってくる。人の話を聞かずに買った製品を後悔する程度ではすまなくなる。その会社、その組織に所属している人たちみんなの生活がかかってくるのだから。
最後に自分の話をすると、話を素直に聞いてくれないといういやな思いをしてきたせいか、私自身は人に相談しに行くときは、ほんとうにその人の意見を聞きにいく。仮にあらかじめ自分の中で最終的な選択があったとしても、相談しに行った、私が専門家と認めた人が別な製品を推薦したとしたら、その意見も入れて再度製品の選択をやり直すようにしている。
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