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2007/02/05

漫画家は蕎麦屋より偉いのか

 産経新聞 Web 上で “知的財産” の特集をしている。著作権の期間を50年から70年へ延ばそうという話もあり、私も興味深く見ている。

 “知的財産” の特集は、ITMedida サイト上でも行われている。今日のタイトルを見て、私が何のことを話そうとしているのか気がついた方も多いと思う。ITMedia で紹介されたシンポジウムにおける 松本零士氏 の発言についてである。

 司会の 中村伊知哉氏 の

「自分の死後、家族の生活を守りたいと思うのは、作家もそば屋やうどん屋の主人も同じ。作家の遺族は著作権法で保護されるが、そば屋・うどん屋の遺族を守ってくれる『そば屋法』や『うどん屋法』はない」

という発言に対して、松本零士氏 が、

「そばやうどんと一緒にしてもらっては困る。作家の作品は残るが、そばやうどんは私にも作れる」

と言い返した部分が、私にはどうしても無視することができなかった。このシンポジウムの記事にトラックバックをしているブログを見ても、この点を批判しているブログが多かった。

 この発言部分がこのシンポジウムの本筋ではないし、著作権の保護期間の延長議論の本質でもない。そのことは私もよくわかっているつもりである。

 しかし、あからさまに “作家” が作家以外の職業より優れている、という趣旨の発言をされては、発言をした人が推進している案(この場合は70年に延長)を、私は支持できない。70年への延長が単に 「作家の俺は、他の職業の者より優れているのだから、もっと経済的な恩恵を受けるべきである」 としか聞こえないからである。

 どうも、有名人は自分を特別視する傾向にあるのが、私には気になる。以前、島田紳助氏と松本人志氏がやっていた深夜番組のことである。両者が 「うちら有名人は、免許更新の時の講習は、個別に個室でやるべきだ」 という趣旨の会話をしていた。この会話だけというわけではなく、だんだんとこの二人の思い上がった会話が耳につくようになっいった。そして、二人のうち一方でも出ている番組は見なくなっていった。

 話の内容が “著作権” の話からずいぶんそれてしまった。しかし、まず、気になったのが、著作権の期間を20年延ばそうとしている人たちが、先の思い上がっているように聞こえる発言をする人や、著作権で不条理に稼いでいる団体の人たちかと思うと、私は単純に “延長反対” と叫ぶしかないと思っている。

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追記: 松本零士氏のこの発言に、何でここまで過敏に反応してしまったのか、自分なりに考えてみた。

 思い当たるのは、私がテスターだったことである。私がテスターだったころに、一部のプログラマー出身のマネージャからよく 「テスターなんて誰でもできる。」 といわれたものである。

 そりゃ~、開発中の製品をつかって何らかの作業をしていれば、小さいバグの一つや二つを見つけることもあるだろう。それをもってして 「テスターなんて誰でもできる。」 というのであれば、「そばやうどんは私にも作れる。」 という発言と同じである。

 漫画家が趣味で作った蕎麦が果たして商売になるのか?  同じように、たまたまバグを見つけるのではなく、計画的にかつ効率的にバグを見つける、もしくはバグがないことを見極めることが、本当に 「だれでもできる」 のか?

 “自分が他人よりも優れた仕事をしている” と思いたいがために、他の職業を自分のやっている仕事より劣っているように思わせようとしているとしか、私には思えない。

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