燃え尽きた産婦人科医師
少し前から産婦人科医師が大変な立場に置かれていることは、ニュースなどで聞いていた。しかし、この記事を読むと、一部ではかなり危機的な状況なのではないかと心配だ。
燃え尽きたら
メディカル朝日コラム 医局の窓の向こう側
[2007年7月3日]
- 自分の体力の衰えやリスクの高まりは無視して「すべてうまくいって当たり前」を要求する
- 「うまくいって当たり前、何かあったら医療ミス」の考え方がある
- 「私は悪くない、悪いのはおまえだ!」他罰的に語ることで、被害者の殻に閉じこもる
一部の患者達が、こう↑考えたくなるのも、だいたい想像がつく。少し前まで、病院は医療ミスを徹底的に隠蔽してきた。それが公然になってしまったため、治療が及ばないと医療ミスがあったのではないかと疑われてしまう。本当に手の打ちようがなかったとしても、「医者が医療ミスを隠しているのではないか?」 と疑ってしまう。それが高じて、「医療ミスさえなければ、かならず怪我や病気は治るはず」 と考えられるようになってしまったのではないかと、私は考えている。
医師側がきちんと情報開示をするようになり、患者の側にそれらが信用されるようになるには、まだ多少の年月が必要とされるだろう。そうして “追い詰められる優秀な医者” が減っていって欲しいと願っている。
ところでこの記事を読んで、ずいぶん前に放送された “アメリカでの保育所の危機” に関するレポートを思い出した。
そのレポートでは、保育所に預けた子供が病気になったり、怪我をしたりすると、子供の親がすぐに保育所を裁判所に訴える、というものであった。訴えられた保育所は、裁判に時間と費用を取られ、裁判に負ければさらに費用負担が増える。子供を預かるときに “保育所を訴えません” という承諾書に親のサインをもらうのだが、事が起こると結局親は保育所を訴える、ということだった。
結果、多くの保育所は増える負担に耐え切れずに閉鎖に追い込まれる。子供を保育所に預ける親にしても、子供を保育所に預けなければ働きにいけない。保育所が閉鎖されれば、親も困るはずなのだが、子供の治療費が払えないため、治療費を保育所に請求するしかないのが実情だ、とインタビューに答えていた。
インタビュアー 「この保育所がないと、あなたは困りますか?」
親 「ええ、とても困ります。」
インタビュアー 「子供が保育所で怪我をしたら、保育所を訴えますか?」
親 「ええ、訴えますよ。」
インタビュアー 「なぜ、訴えるんですか?」
親 「子供の治療費が払えないからです。」
インタビュアー 「裁判費用で保育所が閉鎖することになるかもしれなくても、保育所を訴えますか?」
親 「ええ、訴えますよ。お金がありませんから。」
インタビュアー 「この保育所がないと、あなたは困るんですよね?」
親 「ええ、とても困りますよ。」
という会話がひどく印象に残っていて、今でもここだけははっきりと覚えている。
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コメント
昔どこかで聞いた話ですが、医療と航空業界を比較して、航空業界では個人のミスが事故を招かないように必ず二人以上で判断するシステムができているのに対して、医療ではまだまだ医者個人に判断がまかされているためにミスが起こりやすいという話を聞いたことがあります。ミスのおきづらいはずの航空業界でも人為的事故は起きているわけですが、「がんばる」「きをつける」だけでは無理があるのはもっともな気がします…
それにつけても「正義」の名にかけて結局お金を一番もうけている弁護士というのはつくづく「悪」だなぁと思ってしまいます。(もちろんそんな人ばかりではないのでしょうが)
カナダなど医療はタダという国もありますが、医療過誤の発生率とその損害賠償額が抑えられない限りは継続できないシステムかもしれませんね…いっそのこと、弁護士もお金をとらないシステムにしてしまうとか…
長々と失礼しました。
投稿: け | 2007/07/13 13:49
け さん、情報提供をありがとうございます。
「一つのことを二人以上で確認をする」
これは、ミスを防ぐ上での基本ですね。私がテスターだった頃も、最重要な機能は、時間を置いて別なテスターが再度チェックすることをしていました。
私も最近は胡散臭く感じる弁護士が増えている気がします。やたらとテレビに出たり、わざと過激な発言をしてみたり、超長距離マラソンをしてみたり・・・。
弁護士ならば、米国映画“ア・フュー・グッドメン”の主人公のように、権威や権力に屈することなく、真実を追究して欲しいものです。
お金のために、法律の知識を悪用して、違法行為を入れ知恵したり、有罪のものを無罪にするのは何というか・・・、間違ってますね。
投稿: マスト | 2007/07/13 20:43