開発担当者のコメントを深読み
前回に引き続き iPhone の話から始める。
前回の記事を書くに当たって、iPhone の評価について簡単に調べていたら、下のような記事を見つけた。
国内6メーカー担当者が実物を見て語った「iPhoneの衝撃と本音」
IT-PLUS [2007年7月19日]
この記事の中で、私が一番興味を引かれたのが、日本の担当者達が一様に、自分達がおかれている開発環境を嘆いている点だ。記事の中で取り上げられている担当者は、ごく限られた人たちなので、ケータイ メーカーの開発者すべてが “そうだ” といういうことはないだろうが。
なお、この記事の本来の趣旨は、日本のケータイ開発担当者の iPhone に対する感想であり、日本のケータイ開発担当者の自社開発環境に対する嘆きは、私の深読みでしかない。
もし、以下の内容が、担当者達の本音だと仮定すれば、担当者達の不完全燃焼に対しての嘆きが読み取れる。
- 「iPhone担当者は、楽しみながら製品をつくっていたんだな、と思う」(E社製品企画担当)。
- 「iPhoneには、物作りに対する強い信念を感じる。タッチパッドや機能などを表面的に真似しても、iPhoneを超えるものはできない。開発者の信念がこの製品を作り上げたような気がする」(F社技術担当幹部)。
- 「チームワークがしっかりしている。一つのものに集中しているから、製品化を実現できたと思う。メーカーとしてのやり方を貫いている点は見習いたい」(C社端末戦略担当)
- 「我々も対抗できる商品をつくりたい。しかし、やるからには徹底しなくてはいけない」(D社製品企画担当)。
これを、私の脳内で深読みすると、
- 「製品を作ることがぜんぜん楽しくない」(E社製品企画担当)
- 「信念などなく、低コストで売れるものを作っているだけ」(F社技術担当幹部)
- 「他のメーカーを気にして、ポリシーがころころ変わる。社員の気持ちもみんなバラバラ」(C社端末戦略担当)
- 「日々、雑務に追われて、製品開発に集中できない」(D社製品企画担当)
となる。
これは日本の会社に限った話ではないだろう。米国企業であっても、多くの会社は似たような状況ではなかろうか。
むしろ、Apple が極めて特別な存在であるといえる。スティーブ・ジョブズ という、極めて稀有な人物がいてこそ、成せる業だろう。
多くの大企業においては、経営者が経理には明るいが、技術には疎い場合が多い。技術者の製品に対する思い入れなど、予算に計上できないモノは、もちろん評価されない。そんな経営者の元で仕事をしている職人気質な開発者達が、Apple の iPhone を見れば、やはり上記のような妬ましい気持ちになって当然とも思える。
ただ、製品に対する思い入れが、絶対に正しいわけではない。先の スティーブ・ジョブズも、NeXTcube と作る際には、必要以上にロゴデザインや筐体にこだわったため、結果として NeXTcube が失敗に終わっている。
結局は、記事の中にある 「割り切りの良さ」 で折り合いを付けるのが最善ということなのだろう。
こだわるところは徹底的にこだわって開発者の思い入れを満足させる。一方で、優先度の低い部分は、経済的な観点からコストを削減していく。そうやって、開発者のモチベーションを上げつつ、製品として競争力のある価格に押さえる。
至極当たり前のようなこんなことが、実際には稀にしか見られないことを考えると、やはり難しいことなのだろう。企業経営に関わったことのない私には、想像するしかない。
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