経済的公害
ヨーロッパ各国、特にフランスとイギリスが中心となって、金融の新たな規制を世界的に行おうとしている。その具体的な行動が “金融サミット” だ。
しかしこれも、考えてみればおかしな話だ。
1994年のメキシコ通貨危機、1997年のアジア通貨危機 があったにもかかわらず、この時欧米各国は、投資銀行やヘッジファンドといった金融機関に対する規制を一切行わなかった。
ところが、火の粉が自分達にも降りかかり、あちこちで火事が起こったとたんに、「規制が必要だ」 と叫び始めたのだ。なんとも間抜けな話ではないか。
金融システムへの規制に関しては、いつものごとく米国が反対している。
まぁ、そうだろう。これまで今の金融システムで、おいしい思いをしてきたのだから、一度の失敗ぐらいでは、そうそう過去の大きな成功体験を否定できるものではない。一度大きく当てた人が、その後負け続けてもなかなかギャンブルから抜けられないのとが同じだ。ちなみに、こういう現象を 『間欠強化』 と呼ぶそうだ。
話が変わって、以前 “心の公害” という言葉を提案したことがある。一言で言えば、
「企業において活動をしていると、“ストレス” という有害物が生み出される。その有害物は、社会環境を悪化させる」
というものだ。工場廃棄物は、人の身体を蝕む公害だったが、仕事によるストレスは、人の心を蝕む公害という考えだ。
話を金融の話に戻す。
今の投資銀行やヘッジファンド、レバレッジといった仕組みは、それを使っている本人達にさえ把握できないくらいの 経済的リスク を生み出すようになってしまった。これが、今回の世界的経済危機の原因である。
この際限なく膨れ上がるリスクを、私は 『世界経済を蝕む有害物』 ととらえた。
つまり、投資銀行やヘッジファンドの企業活動によって、有害物 = 公害 が発生したのだ。
その昔、工場が有害物質を処理せずに工場外に排出したために公害が発生した。そして、国は廃棄物の排出を規制して、企業は廃棄物を工場内で処理するようになった。
最近では日本でも “メンタルヘルス” が取り上げられるようになった。企業においても、「心に問題を抱えていたのでは、作業効率が悪い」、「メンタルヘルスに対応しないと良い人材が集まらない」 と気がついたためだ。
同じように、有害物を生み出している投資銀行やヘッジファンドは、当然規制されるべき対象、というのが私の考えだ。
今回の金融サミットでも、米国=ブッシュ政権 は金融機関への規制強化を否定するだろう、と私は予想している。
しかし、環境問題でもブッシュ政権は後ろ向きな姿勢を示した結果、米国国民はむしろ次期オバマ政権には、積極的な環境問題への取り組みを期待している。
同じように、ブッシュ政権が金融規制に反対すればするほど、多くの市民にとっては金融規制が必要不可欠なものであることの証明のように思える。
そういえば、“ニューエコノミー” はどこへいったのだろう。
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