iPad 狂奏曲
昨日、5月28日にアップル社の iPad が日本で正式に発売された。マスコミ各社、特にテレビのワイドショー系の番組で、これでもかと言わんばかりに報道されていた。それらを見て私が感じたことをうまく表現する言葉が見つからないが、強いて言えば 「不安」 であり 「不快」 であり 「不気味」 といった感情がゴチャ混ぜになったような感情だ。
やれ 「1200人のすごい行列」 だとか、買って出てきたばかりの人にその場で使わせる場面だったり、スタジオでいかに iPad が素晴らしいかや楽しいかを声高に叫んでみたりといった光景が、民放テレビ局すべてで見られた。“あくまでも私個人の勝手な憶測だが”、アップル社やソフトバンク社から広告費をもらって宣伝しているとしか思えない報道のされ方だった。
別に私は iPad 自体そのものを否定する気持ちはない。iPad そのものを、私自身は触ったことはないものの、あちこちの記事を読む限りではよく出来ていると思うし、並んででもはやく買いたい人がいることはよく理解できる。もっとも、私自身は欲しいとは思っていない。
私が気になったのは、iPad の宣伝広告のような報道(とさえもはや言えないかもしれない)のされ方だ。iPad を絶賛するコメントしか出てこない。iPad がいかに素晴らしいか、そればかりを強調するような内容だった。
私が目にした範囲では、『とくダネ!』 で小倉智昭氏が 「米国での発売後すぐに iPad を買ったデーブ・スペクター氏 は、もう iPad を使っていない」 という発言が、唯一 iPad に対してネガティブな発言だった。
そもそも iPad は、これまでまったく世の中に無かったタイプの製品ではけっしてない。画面だけで構成されて、タッチパネルで操作をする大量生産タイプは、8年前から世の中に存在している。にも関わらす、これまでほとんどマスコミでは取り上げられてこなかった。それなのに、その発展形である iPad をここまで持ち上げるのは、仮に iPad がそれまでの問題点の多くを解決したモノであったとしても、やはり宣伝広告費が大量にマスコミにばらまかれたためと思わざるをえない。もしくは、広告費収入の減収に悩んでいるテレビ局各局が、多額の広告費を出してくれるソフトバンク社に配慮したのかもしれない。
いずれにしろ、“もしそういったアップル社・ソフトバンク社に配慮した報道をしたのであれば”、画面の目立つところには 『これは iPad の CM です。』 とでもテロップを出すべきなんじゃないかと思うのである。普段 「公正・中立」 と言ってはばからないマスコミ・テレビ局が、スポンサーをヨイショしたような “報道” をすることに 「不安+深い+不気味」 を、私はどうしても感じてしまう。
このような報道を見て、IT機器に馴染みのない人たちまでも 「これなら私にも使えそうだ」、「これを買えばいろいろ楽しくなりそうだ」 などと感じて iPad を買ってしまうと、15年前の Windows95 の二の舞になってしまうのではないかと、いらぬ心配をしてしまう。
Windows95 の時も、マスコミが盛んに 「Windows95 であれば、これまで難しくてパソコンをうまく使えなかった人でも、簡単にパソコンを使えるようになります」 と煽っていた。その煽りに乗って Windows95 パソコンを買ったものの、結局使いこなすことが出来なかった人を、私はいっぱい知っている。そして、ホコリを被り続ける大量のパソコンを生み出してしまった。
iPad も同じ危険性をはらんでいるように感じる。上述した デーブ・スペクター氏の行動 がそれを象徴しているように思う。
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コメント
TVはただの広告用の看板ですよ。芸能人はそれの営業みたいなもんじゃないですかね。かなり立ち位置は違うけど。
マスメディアに公平中立なんてものはありませんよ。必ず私意によって動くきます。自然発生的な総体の表出ではなくとても個人的な作為的なものですよ。
ええと、挨拶も無くいきなりうざい語りしてすみません。が、概ねあなたの意見に賛成でしたので書かせてもらいました。
私はTVをあまりみないので報道番組までその有様なのは知りませんでしたが、それとは別にiPhoneのCMを見て「違和感・不快感」を感じましたね。やれ「美しい」だ、やれ「素晴らしい」だ、やれ「革命」だ・・・
そしてそれを語るあの催眠術的な甘ったるい男の声。
なんかこう空に立ち込めるどす黒い雨雲のように見え、とてもじゃないけどそれを観て晴れやかな気分にはなれませんでしたね。
長々とすいませんでした。邪魔でしたら削除してください。
投稿: NOsaka | 2010/06/05 10:38
NOsaka さん、こんにちは。
コメントをいただき、ありがとうございます。
削除なんてとんでもない。
率直な意見を大切に掲示させていただきます。
私や NOsaka さんに限らず、テレビ報道を胡散臭く思っている人は、今では世間一般では多数はなんじゃないかなと、自分の希望も込めて、思っています。
にもかかわらず、テレビ放送は自局番組の宣伝をいっそう多くしたりと、貴重な電波資源の無駄遣いが目に余ります。
民主党の一部や官僚の一部が考えているように、電波事業が入札制となり、電波資源をもっと有効・有益に使ってくれる企業が使えるようになればなと、淡い期待をしていたのですが、今の民主党では夢のまた夢で終わりそうです。
私が個人的にできることといえば、喜んでテレビを見ている自分の子供に 「これはテレビ局に都合のいい情報だけなんだから、うのみにするんじゃないぞ」 と常日頃から言い聞かせることぐらいしかないのが、歯がゆい限りです。
投稿: マスト | 2010/06/05 22:19