経済絶対主義
一般的に 『市場原理主義』 や 『市場経済原理主義』 という言葉がよく使われる。それらの用語にはすでにの定義が与えられており、その言葉を聞くだけで多くの人は、それがどのようなものかおおよそイメージすることができる。
しかし、今私が感じている 「今の日本の社会システムの違和感」 は、定義されている言葉で表現されるよりも、もっと低いレベルの話じゃないのかと思うようになってきた。
その違和感を自分なりの言葉に置き換えたのが、この記事のタイトルにした 『経済絶対主義』 だ。経済学に関して全くの素人の私が言うことなので、何ら学術的な裏付けのある話ではない。あくまで私が私の稚拙な知識の範囲で付けた言葉でしかない。
「今の社会は経済抜きには成立しない」
「景気を良くすることが日本を再生する唯一の方法だ」
「国民のために景気が良くしなければならない」
いずれもあちこちでよく聞くセリフだ。そしてそれらのセリフは常に正しいコトとして語られる。
果たして本当にそうなのだろうか? そもそも、今の 「経済システム」 は、なによりも重要なものなのだろうか?
テレビも新聞も朝から晩まで 「株価が上がった・下がった」だの、「為替レートが上がった・下がった」 だのやっている。日本経済新聞やテレビ東京など、経済システムのみを扱って成り立っているメディアのようなものだ。
はたして今、 「経済」 と呼ばれるものがそこまで肥大化している状況というのは、人が心豊かに安心して生きていくうえで正しい方向なのだろうか? というのが今の私の疑問だ。
そういう話を、昔金融業界で働いていた妻に話すと、「経済が必要ないなんて言うのは石器時代の話。」 と鼻で笑われてしまった。確かにそうかもしれない。
しかし、経済学や市場原理といったものが存在しない時代であっても、人は豊かに元気に暮らしていたのだ。経済と名のつくものがもっと縮小したとしても、人類が死滅するとは到底思えない。
ところが、今のメディアの報道を聞いていると、「経済を活性することが一番重要」、「景気をよくしなければ、生活がよくならない」 という話ばかりだ。
経済や経済学というものは、人々の生活を豊かにするために作られてきたものだと私は思っている。
にもかかわらず、現状は 「経済を支えるため」 や 「景気を良くするため」 に多くの国民の生活が犠牲になっているように、私には見えて仕方がない。
「国民の生活よりも、経済の活性化・景気浮揚が重要」、そういった見え方を、私はここで 『経済絶対主義』 と表現したのだ。
では、なぜそれほどまでに政府やメディアが 「経済」、「経済」 と 『経済絶対主義』 を信じさせようとしているかと考えれば、私の行き着いた答えは一つだ。
そう 『経済絶対主義』 は、政府や官僚・役人、メディアとそれにつながる資本家たちに、とても都合がよいからだ。
「景気を良くするため」 という名目で、多額の税金をつぎ込み無駄な公共工事を行う。無駄な公共工事によって作られた多額の借金に苦しめられるのは、結局は国民だ。にもかかわらず、それよりも 「景気を良くすることが最重要」 と言い切る政府やメディア。逆に言えば、景気さえよくなればすべてがうまくいくと国民に信じ込ませている。
私にはそれが正しいとは、どうしても思えない。
では、私はどうしたいのか? 私は 「それは社会主義だ」 と言われようとも、強制的に富の再分配を行うべきだと思っている。
もちろん旧ソ連のようにすべてを平等に分配するという意味ではない。そうではなく、格差が広がりすぎないようなシステムを作るべきだと考えている。
起業して、成功して、富を得たとして、その富を得られたのは、なにもその起業家個人の力によるものだけではないはずだ。その起業の成功に貢献した人たちや、もっと言えば、その起業家が生活していく上で必要な社会基盤を支えている人たちがいるからこそ、なし得た成果なのではなかろうか。
その起業家個人の才能があればこそ成功したのもまた事実なのだから、ある程度の富を手にするのは、私も当然だと思う。しかし、だからといって個人で富を独占するようなことを許すような社会システムは、やはりどこか歪んでいるように思える。
ある程度の富の取得を認めつつも、その人のいる社会システムを支えている人たちすべてにある程度富が再分配されるようなシステムが、長い目で見て社会を安定させるのだと、私には思える。
「努力によっていくらでも報われる社会にしなければ、社会が停滞してしまう」 というのはよく言われることだ。しかし現実には、汗水たらして休まずモノを生み出している人たちが報われず、単に試験で高い点数を取っただけの官僚が、外郭団体の役員として高額の報酬を得ている、という状況は、「努力したものが報われる」 と言えるのだろうか? やはり新たに価値を生み出している者が報われるようにするべきではないのか。
「バブル以降、ずっと景気が低迷している」、「景気をもっとよくしなければいけない」 という話の前提は、
「高度経済成長やバブル経済の時があるべき姿」
なのではなかろうか。
しかし、長い日本の歴史から見ると、 「高度経済成長」 や 「バブル」 の時の方が、むしろ特別だったと考える方が自然なのではなかろうか。
何が言いたいかと言えば、「今は景気が悪い」 と経済のせいにするのではなく、「今の状況が日本の標準的な状態である」 と頭を切り替える必要があるのではないかということだ。
今の状況が通常の状態だと考えれば、むやみに借金をして無駄遣いをしようという考えにはならないし、今よりも効率的なお金の使い方という考えも出てくるだろう。
もっと極端な意見を言わせてもらえば、「永遠に成長を続ける」 ことは常識的に考えれば不可能だ。ならば、人口減少をきっかけに経済規模を縮小し、経済への依存度を減らす。その代りに、食糧自給率を上げて、他国に依存しなくても生活できる環境を作るべきだ、というのが今の私の個人的な意見だ。
だから私は TPP には反対だ。人が生きていく上で必要な食料を他人の手にゆだね、代わりに売れるかどうかわからないモノ売りやすくするというのは、どうみても割に合わない。他国に生命線を握られて、自分たちが思うようにモノを売れるとも到底思えない。また同様に、国としてのまとまりや治安を考えて、移民受け入れにも私は反対だ。
世の中でよく見かける 「TPP や移民の受け入れは絶対に必要」 という意見の元をたどっていくと、たいていは市場原理主義者、私的に言えば 『経済絶対主義』者 に行き着く。そしてその者達は、短期的な自己利益だけしか考えてないようにしか見えない。自分の利益や都合だけを考えた意見を、さも絶対的に正しい意見のように信じ込ませようとするのは、なにも詐欺師だけとは限らない。むしろ、国の左右する権力者がよく使う手だったりする。
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コメント
興味深く読ませていただきました。僕もシロートですが思ったこと、書かせてもらいます。
経済という言葉をその語義どおりに扱うならば、それはすなわちモノ、サービスに金額をつけ、お金でそれを売買することになるんじゃないかと思います。そういった意味では確かにお金をメディアとした売買というものがなくなる世界というのはちょっと考えづらいですね。
為替レートの変動というのは輸出製品で収入の大きな部分を得たり、原油をはじめさまざまなものを輸入している国である日本にとっては結構大事ですね。
株というのは会社が自分の評判や将来性をカタに借金をしているようなものでしょうか…でも、実際の借金と違うのは誰も株を発行している会社に「1万円で買った株券を返すから1万円返してくれ」とかいわないところですね…借金というより、第3者が勝手にその会社がうまく行くかどうかについて賭けをしているイメージでしょうか…
そもそも、景気がよいっていうのはどうゆうことなんでしょう?バブルのころは土地の値段が勝手に上がって、そのおかげでいろんな人・会社が勝手に金持ちになって、そのお金がいろんなところに回って行ったかんじでしょうか?
景気が悪いって言うのは、いろいろなものを買ってくれる人がいない状態でしょうか…それでも生活に困っていない人は必要最低限のものは買い続けますよね… ひとつ思うのは、今ある『経済システム』というのは、いろんなところでいろんな人・モノがものすごい額の借金をしているという所ですね…国債しかり、家のローンしかり、年金も…
まるっきり借金のない状態だったら、お金もまったくなくて、収入もなくても、ずーっと差し引き0のままですが、借金のある状態で収入がなくなるとほっといても借金は増えますね…サメのように体をカネが常に流れる状態にしておかないと窒息して死んでしまう…
そうなってしまうと常にどこかからか借り足しているか、どこかで賭けをして儲けを期待するか、借りたお金をさらに高利で貸し付けて利ざやを稼ぐか…モノを作って売って儲けるか…どんどん市場経済にのめりこんでいく以外にないですね…特に日本政府のように借金返済の目処がぜんぜん立たない場合は…
ひとつ思ったのはグローバリゼーションというのは結構よくない結果をもたらしたものでしたね…日本の住宅バブルもアメリカからドルが流れてきたのが原因のひとつだったと聞いたことがあるような…だからといって、石油のない世界に戻るというのも今となっては想像もできませんね…一番悪影響のある種類の経済活動は「投機」なのかもしれません。
お金の貸し借りの世界ではものすごいバブルも起きなさそうですが、さまざまな技術革新も起きなさそうですね…新薬研究など、先行投資なしではたいしたことがおきそうにありません。
日本のもうひとつの大きな問題はこれから働き手がどんどん減っていくということでしょうか…僕は年をとっても死ぬまで働き続けられたらいいなと思っているのですが(というか、死ぬまでリタイヤできないだけ?)、みんなリタイヤしないで働き続けたとしても、おのずとできる仕事はどんどん、なんと言うか、「変わって」いきますね…アメリカなんかを見ていると移民を受け入れることで若い世代を確保しているようなところもありますね…これがじりじりと平均年齢が上がり続ける状態になると、どうゆう事が起きるのでしょう?
政治はいいとこなしですね。お金を持っている人たちが、自分たちの金回りをよくするために政治を動かす。お金持ちはもっとお金が回ってきて、貧乏はもっと発言権が弱くなる。政治かもスポンサーになってくれているお金持ちのことは裏切れませんね…そんな状態だから正義に燃える政治家は淘汰されるか黒くなるかどちらかしかありませんよね…
政治にお金が影響を与えられる仕組みがある限り政治は変わらないのでしょうね…
むかし、ポルトガルに旅行に行ったことがあります。お金持ちの国ではないのですが、昔、社会主義だった名残などもあり、貧富の差があまりない感じで、みなそんなに豪勢にはやっていないのですが、「こんなもんだろ」みたいな感じで、淡々とやっていて、なんだか平和そうでした…日本もそのうちそうなるんでしょうか…
長々と、失礼しましたー
投稿: け | 2011/01/26 16:18
け さん、こんにちは。
いつもコメントをありがとうございます。
自分とは異なる経験、異なる立場からの違う視点での意見というのは、私にとって、大変参考になります。
私自身も、自分の今思っていることが絶対に正しいと信じきっているわけではなく、ただ単に自分に都合のいい社会やシステムを述べているにすぎないのではないかと感じたりもしています。
とはいえ、自分が「いい」と思ったものがその後に社会でメジャーなものになったり、自分が「だめだこりゃ」と思ったものがその後に消えていったりということを、それなりに経験してきているので、自分が「こうあって欲しい」と思うことが、社会の多数の人にとってもそうなのではないかと考えて、自分の考えをこうして記録に残している次第です。
その意味で、長々と書き連ねたものに付き合っていただき、さらにはたくさんのコメントをしてくださる け さんには、とても感謝しています。
またなにか思うところがありましたら、コメントしていただければと思います。
投稿: マスト | 2011/01/28 10:27