『いつの間にテレビ(TM)』 は失敗すると思う
ニンテンドー 3DS (以下、3DS) の追加機能で始まった 『いつの間にテレビ(TM)』。3DS 発表時からの売りの一つでもあり、期待していたユーザーも多かったと思う。私もその期待していたうちの一人だ。
6月21日に 『いつの間にテレビ』 が始まってまだ三日しかたっていない。しかし、私には、この 『いつの間にテレビ』 が成功する理由を見つけられない。一方で、失敗すると思える理由は、いくつも見つけられるのに。
私が 「明らかに 『いつの間にテレビ』 が失敗するだろうな」 と思う理由をあげてみる。
1.コンテンツに魅力がない
これはコンテンツビジネスにおいて、致命的な欠陥といえる。
6月24日現在で、主なコンテンツは、
- どうぶつDEカレンダー
- ぶらり特選 鉄ビュー3D
- マジック教室3D
- アイドリング!!! 大相撲3DS場所
- 日刊トビダス
- 3Dちょうこくの森
- ENJOY! SPORT
の7番組だ。これに広告映像と画像がいくつか加わる。
私の個人的感想だが、どれもやる気の感じられない、適当に作ったコンテンツにしか見えない。おそらくかなりの低予算で作られていて、「この予算ならこんなものだろう」 と現場は考えて作ったんじゃなかろうかと、想像している。
YouTube に個人が趣味で公開している映像に、上記のコンテンツよりはるかに楽しめる映像がある。
2.コンテンツの保持ができない
テレビ放送に対して、ビデオテープレコーダーやハードディスクレコーダーが普及しているのは、
- 「気に入ったコンテンツは、何度でも見たい」
- 「時間をずらして、時間がある時に見たい」
という、視聴者側の強い願望があるからだ。
ところが 『いつの間にテレビ』 は、その視聴者の強い願望を完全に無視する形で、配信されている。配信されたコンテンツが、配信毎に常に上書きされてしまうのだ。配信を受け付けなければ、現在のコンテンツを保持できるが、新しいコンテンツは受け取れない。新しいコンテンツを受け取ろうと思うと、古いコンテンツは必ず削除されてしまう。
これは、映像を提供しているテレビ局側の論理だ。
常々テレビ局は、「テレビ放送が想定しているのは、リアルタイム視聴のみである。録画視聴は、想定外。」 と言い切っている。録画されてコマーシャルを飛ばされたのでは、自分たちを潤しているビジネスモデルが、破たんするからだ。よって、“視聴率” は考慮するが、“録画率” は黙殺されている。
こんな配信のされ方では、後で 「あの番組はよかったよ」 と聞いても、二度と観ることができない。それではストレスを感じるばかりで、『いつの間にテレビ』 自体に嫌悪感を抱くようになると思う。
座談会では、「一期一会」 とか 「毎日ワクワク」 とか言っているが、視聴者の多くがそれを期待しているように思えないし、言い訳のように聞こえてしまう。
3.山場CMの乱用
ずっと以前に記事で批判した “山場CM” を 『いつの間にテレビ』 でも乱用している。たった2~3分のコンテンツにも関わらず、一番盛り上がるところで余計な映像を挟んでくる。もちろん、興ざめする。
同じように CM を流すにしても、「最初にまとめて流す」 といった別なやり方があるはずだ。これも、視聴者にケンカを売っているようにしか見えない。
4.先送りができない
上記の山場CMとも絡んでくるのだが、“飛ばし見” しようと思っても、再生時間を先に進められない。巻き戻して観ることはできる。
見たくもない CM を飛ばされたのでは、ビジネスモデルが成り立たないという理由で、先送りができない仕様にしているのが見え見えだ。
いまや YouTube といったストリーミング再生ですら、自分の見たい時間からの再生が可能な時代に、端末に保存されたコンテンツの先送りができないというのは、「本当に視聴者のことを考えてないんだな」 と呆れてしまった。
5.奥行きが物足りない
せっかくの3D映像にもかかわらず、映像の奥行き感が物足りなく感じる。不自然に前後に圧縮されたように感じられるのだ。
私の周りにも、3D映像がうまく立体に見えない人が少なくない。平面のディスプレイ上で映像を立体に見るには、コツと慣れが必要のようだ。
本当は、ゲームで行われているように、奥行き感を3Dボリュームで調整できればよいのだろうけど、3D映像ではそういう仕組みはないようだ。
とすると、3D映像に慣れていない人にも、違和感が少なく立体感を見てもらおうという配慮で、奥行き感をあえて弱くしているように思える。
それは理解できるのだが、やはり個人的には、もっと自然に見える深い奥行きの3D映像を見たいと思う。
こうやって、失敗するだろう理由をあげていくと、多くに共通するのは、
「番組を提供しているテレビ局の都合ばかりが優先されている」
ということだ。
今のテレビ局およびテレビ放送は、スポンサーばかりを向いて、本当に視聴者に喜ばれる番組作りをしなくなっている、と言われている。私もそう思っている。
3Dコンテンツがまだまだ不足している現状、ニンテンドーが3Dコンテンツの提供を受けるにあたり、テレビ局側の都合を全面的に受け入れざるを得なかったという事情は、想像に難くない。
思い返してみると、任天堂の 3DS に対する施策は、失敗続きである。
盛り上げる時期に大震災があって、消費が一時的に冷え込んだのは任天堂の責任ではないものの、本体発売と同時に新作のキラーコンテンツを発売しなかったのは、やはり失敗だったろう。かといって、予想以上に 3DS の需要が高まって、品不足 → オークションでプレミア、となってしまっては、やはり任天堂は批判を受けるだろうから、難しい選択ではあったろう。実際、かなり普及したと思われた PlayStation Portable が モンスターハンター 1作で、長期間品不足になって、中古品が新品より高くなったくらいだ。
いずれにしろ、今のままでは 『いつの間にテレビ』 が 3DS のけん引役になるとは、到底思えない。任天堂が、早期に方向を修正することを、個人的に願うばかりだ。
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